世界に広がるIkigai。神谷恵美子『生きがいについて』[22-15]【レビュー#392】

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恥ずかしながら神谷美恵子も「生きがいについて」も知りませんでした。
知ったのは↓のアメリカで働く中国人の動画から。


I QUIT My $120,000 Job After Learning 3 Things
(3つのことを学んで年収1,200万円*の仕事を辞めた)
*1ドル=100円で換算。2023年1月現在だと1500万円強)

途中で「Ikigai」って聞こえてきて、聞き間違いかと思ったらホントにIkigaiでした。
外国にもそんなインパクトを与えてる「生きがい」について読んでみたいと思ったのと、
日本人なのに知らないなんて恥ずかしい、という思いもありました。

ですぐに買って読んでみたわけです。

いやー、なんかスゴいです。
古今東西の哲学者やら宗教家やら作家やら思想家やら、あらゆる角度から生きがいについて
検討し自分なりに「生きがい」というものについて理論構築してる。
さらにそれを平易な優しい語り口で説いてくれている。

そしてなによりもその理論の支えになっているのが愛生園というハンセン病患者の隔離病棟、
療養施設だろうが実質はこうだったろう、での入所者との交流を通しての実感だろう。

元は1966年に出版されたものだけど、生きがいという人間の根源に関わる部分を
深く掘り下げてるので古さとかまったく感じられない。

特に迫力があるのが本文の後ろに付記されている執筆期間の彼女の日記。
この本を書くこと自体が彼女のまさに「生甲斐」だったんだろうと思わせる執念と、
取り組む姿勢がありありと自身の言葉で描かれててスゴみを感じます。

「生きがい」深めてみたいテーマだと感じつつ、これ以上どうすりゃいいんだと。
自分自身でも前から気にはなってるけど読めてない本からの引用が山のようにあって、
これらを一つ一つ潰していくことなのかな、と。
フロム、アリストテレス、プラトン、フランクル、マズロー、パールバック、バージニアウルフ…
これでもホンの一部。氷山の一角にも満たない。どんだけ文献参照してんのよ…。
半端ないです、この人。

まずは他の神谷美恵子作品を読んでみることが先かも…
付録に『生きがいについて』を読む前に、という坪内祐三て人が書いた嫌味な文章に、
まず『神谷美恵子日記』を手にするべきだと思う。てなこと書いてるのでそっちを読むか…。

読了日: 2022年3月3日



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